こんにちは。おとFITNESS運営者のOTOWAです。
筋トレで筋肉がつくと身体が重くなって足が遅くなるという説は昔から言われていますよね。
スポーツをやる方やトレーニングをご自身でされる方も、この説は一度は聞いたことがあるんではないでしょうか。
筋肉をつけると体が重くなってスピードが落ちてしまうのではという心配は、スポーツの現場でもよく耳にするトピックですが、果たしてこれは事実なのでしょうか。
この記事では、筋トレで足が遅くなるという説を深掘りし、競技ごとの適したトレーニング方法についても、現役パーソナルトレーナーが徹底解説します!
- 筋トレをすると足が遅くなるというのは本当なのか
- 筋トレで足が遅くなると言われるメカニズムと真相について
- 中高生向け筋力トレーニングについて
- 競技ごとの適したトレーニング方法について
筋トレで足遅くなるって本当?

筋肉をつけると体が重くなって走るのが遅くなるという話は昔から根強く言われていますが、果たして本当なのでしょうか。
ここでは、なぜそんな風に言われるのか、科学的な視点からその真相を紐解いていきます。
筋トレで足が遅くなる?
筋トレをすると足が遅くなるという話は、スポーツの現場で根強く言われている内容ですが、結論から言うと、筋肉がつくこと自体でスピードが落ちるということは、科学的に見てもあり得ません。
むしろ、筋肉は身体を前へ進めるための「動力源」であり、車に例えればエンジンの排気量そのものです。
エンジンが大きくなればなるほど、発揮できる馬力は高まり、車体を力強く前進させるエネルギーは増大します。
物理学の視点で見ても、地面に対してどれだけ大きな力を、どれだけ短い時間で伝えられるかが疾走速度の決め手になりますから、ベースとなる最大筋力の向上は本来足が速くなるための絶対条件なんです。
ではなぜ、「筋肉がついて足が遅くなった」と感じてしまう選手が後を絶たないのでしょうか。
その最大の原因は、大きくなった新しい筋肉(ハードウェア)に対して、それを自在に操るための神経系(ソフトウェア)のアップデートが追いついていないことにあるんです。
これを知識のない指導者は、「使えない筋肉がついた」などと表現しますが、使えない筋肉など存在しません。
単に、競技者が自分の持っている絶対的なパワーのほんの一部しか、実際の走りの中で引き出せていないだけなんです。
筋トレで作った力を100%推進力に変える技術が不足していると、筋肉が宝の持ち腐れになってしまいます。
スポーツにおけるパフォーマンスは、「パワー(筋肉の絶対量) × テクニック(神経系の使いこなし)」の掛け算で決まります。
筋トレはこの方程式の「パワー」の数値を大きくする作業です。
しかし、せっかくパワーの数値を増やしても、テクニックの数値が極端に下がってしまえば、掛け算の合計値は落ちてしまいますよね。

細身でも足が速い選手は、パワーの絶対値は小さくても、自分の持つ筋肉を100%に近い効率で使い切るテクニックと神経回路を持っています。
筋トレで足が遅くなるのを防ぐには、パワーを増やした後に、それを使いこなすテクニックを底上げする練習が不可欠だということを、まずはしっかり理解しておきたいですね。
筋トレで体重が増えると動きが鈍る?
ウエイトトレーニングによって体重が増えることに対して、「重りをつけて走るのと同じだから遅くなる」というイメージを持つ人は少なくありません。
確かに、走る推進力に一切貢献しない無駄な体脂肪などは、タイムを落とす原因になります。
しかし、筋トレによって増えた筋肉は、自ら収縮し、地面を力強く蹴り出すための原動力となるため、正しく機能さえすれば、トレーニングで増加した質量以上の推進力を生み出してくれる頼もしい存在なんです。
筋肉をつけすぎると動けなくなるという誤解は、極限まで筋肥大を追求したボディビルダーの姿を連想することから生じる認知バイアスです。
彼らは週に何度も特定の部位だけを限界まで追い込み、緻密なカロリー計算を行うことで、あの驚異的な肉体を作り上げています。
一般的なアスリートが競技練習と並行して行うウエイトトレーニングの範疇で、スピードを損なうほど、「意図せず筋肉がつきすぎてしまう」ことなど、生理学的に考えてほぼ起こり得ません。
過剰な心配をしてトレーニングの負荷を下げてしまう方が、競技力向上の機会を逃すことになりかねません。
現に、陸上のウサイン・ボルト選手や、ラグビーやアメフトのトップ選手など、圧倒的なスピードを持つアスリートは皆、強靭で巨大な筋肉を持っています。
このように、体重や筋肉量の絶対値が大きいこと自体が、足を遅くする直接的な原因ではないことは、世界トップクラスの選手たちの体格を見れば一目瞭然です。
彼らはその巨大な筋肉から生み出される規格外の出力を、洗練された動作技術によって100%の推進力へと変換しています。
「筋肉=遅くなる」という古い固定観念を捨て、獲得した筋肉をいかに自分の競技特有の動きにフィットさせるかという視点を持つことが、競技力の向上には重要です。
中学生は筋トレすると足が遅くなる?

中学生の時期は、心身ともに大人へと劇的な変化を遂げる大切なタイミングです。
だからこそ、保護者の方や現場の指導者から、「成長期にウエイトなどの筋力トレーニングをすると背が伸びなくなるのではないか」「体が硬くなって結果的に足が遅くなるのではないか」という不安の声が非常によく寄せられます。
トレーナーである私自身も、こうした相談を受ける機会はあります。
しかし、現代のスポーツ科学や医学のコンセンサスにおいて、正しい方法で行われる筋力トレーニングが、成長を阻害するという根拠は明確に否定されています。
むしろ、成長期における適切な筋力トレーニングは、多くのアスリートにとって大きなメリットをもたらすことがわかっています。
適度な力学的ストレスは、骨芽細胞の働きを活性化させて骨密度を高め、成長ホルモンなどの分泌を促すため、健全な発育を強力にサポートしてくれるんです。
この点については、世界的なストレングス&コンディショニングの専門機関も公式に安全性を認めており、若年層のトレーニングを推奨しています(出典:特定非営利活動法人NSCAジャパン『長期的な運動能力の開発に関する NSCAのポジションステイトメント』)。
専門機関が示す通り、筋トレそのものを悪者扱いする必要はありません。
ただ、中学生くらいの年代は、筋肉量が増えるよりも、神経系が著しく発達する時期にあたります。
ですので、この時期に重視すべきなのは、大人と同じような高重量のバーベルを担ぐことではなく、自分の体重をコントロールする自重トレーニング(腕立て伏せ、懸垂、スクワットなど)を通じて、「正しい身体の使い方」を脳と神経に学習させることです。
ここで培われた基礎的な筋力と運動神経のネットワークが、高校生以降で本格的なウェイトトレーニングを始めた際、それを余すことなくスピードへと変換するための強固な土台になります。
中学生の時点から正しい動きづくりをしておけば、将来足が遅くなるどころか、とてつもない爆発力を発揮するスプリンターやアスリートへと成長する可能性もあります。
高校生の筋トレで足が遅くなるリスクは?
高校生になると、身体の骨格や筋肉が大人にかなり近づいてきます。
この時期から、部活動などでもバーベルやダンベルを使った本格的なウエイトトレーニングを導入するケースが一気に増えます。
中学生の頃のような自重トレーニングだけではなく、外部からの負荷をかけることで、ベースとなる筋肉のエンジンを本格的に大きく育てていくフェーズに入ります。
しかし、だからこそ怪我のリスクも同時に跳ね上がることを知っておかなければなりません。
高校生とはいえ、まだ骨格の成長が完全に終わっていない選手も少なくありません。
骨の末端には、「骨端線(成長軟骨)」と呼ばれるデリケートな部分があり、ここは成人の硬い骨に比べて高校生くらいの年代では力学的な強度が非常に弱いんです。
ここで一番やってはいけないのが、自己流でフォームを崩してまでギリギリの重さを持ち上げようとする(チーティング)ことです。
無理な重量設定は関節に不自然なねじれや強い圧迫を生み、骨端線を損傷してしまう危険性があります。
万が一ここを痛めてしまうと、長期的なパフォーマンス低下や、局所的な成長の阻害に繋がる恐れすらあるため、絶対に避けなければなりません。
ですので、トレーニング中に少しでも関節や腱に痛み、違和感を覚えたら、勇気を持ってその日のメニューを即座に中止する決断が必要です。
まずは正しいフォームで15回程度を余裕を持って繰り返せる軽い重量からスタートし、少しずつ身体を慣らしていくようにしましょう。

また、怪我を防ぎながら安全に筋力とスピードを両立させるためには、自己判断だけでメニューを組むのはおすすめしません。
本格的なトレーニングを導入する際は、必ずスポーツ指導の専門家やS&Cトレーナー、痛みが続く場合は医療機関の医師にご相談されることをおすすめします。
数値や一般的な目安を過信せず、最終的な判断は専門家と共に行うようにしてくださいね。
筋トレで足遅くなるのを防ぐには?

筋力アップがスピード向上の土台になることは事実でも、トレーニング方法を間違えると、「筋肉はついたけどそれを上手く活かせず、結局スピードが落ちる」という事態に陥りかねません。
ここからは、せっかく鍛えた筋力を無駄にしないためのトレーニング法について、代表的な競技ごとに見ていきましょう。
野球向けのトレーニング方法は?
野球界では近年、打球の飛距離を伸ばしたり球速を上げたりするために、下半身の絶対的なパワーを追い求める傾向が強くなっています。
その代表格がスクワットやデッドリフトですよね。
確かにこれらの種目は基礎的なエンジンを大きくするためには絶対に必要なのですが、注意点があります。
スクワットなどは主に、「鉛直方向(上下)」へ大きな力を発揮するトレーニングです。
この上下の数値だけをひたすら伸ばすことに固執してしまうと、「力は強いのにベースランニングが遅い」という現象が起きてしまいます。
実際の野球の試合において、塁間を素早く駆け抜けたり、守備で一歩目を鋭く踏み出したりするための推進力を向上させるには、地面を斜め後方に蹴って身体を、「水平方向(前方)」へ移動させる力が必要です。
筋肉は鍛えた方向と速度にしか力を発揮できないという「特異性の原則」があるため、スクワットで培った上下の力を、前への推進力へと方向転換させるための専門的な練習を、意図的に組み込まなければなりません。
これを怠ることが、筋力があるのに足が遅くなる最大の理由です。
野球向けのトレーニングとしておすすめなのが、スレッド走(重りを引いて走るトレーニング)やバウンディング、前傾姿勢を維持したメディシンボール投げなどです。

これらをウエイトトレーニングとセットで行うことで、脳と神経が、「手に入れた新しい筋肉を使って、前に進むための力の出し方」をスムーズに学習してくれます。
野球に必要なのは重いバーベルを担ぐ力そのものではなく、その力をプレーの中で爆発させる能力です。
下半身のトレーニングメニューを組む際は、重さを求める日と、それを動きに落とし込む日を、バランスよく配置する工夫をしてみてください。
陸上選手向きのトレーニング方法は?
100m走などの陸上短距離競技では、走るスピードを極限まで高めるための技術が求められます。
そこで最重要なのが、「足裏の接地時間」の短さです。
トップレベルのスプリンターが足裏を地面についている時間は、わずか0.1秒(100ミリ秒)程度しかありません。
一般の競技者でも0.12秒ほどです。
どんなに巨大な筋肉を持っていて、ゆっくりなら200kgのバーベルを挙げられるとしても、その最大の力を出すのに0.5秒もかかってしまうようでは、スプリントにおいては本領を発揮できません。
そこで重要になってくるのが、「力の立ち上がり率(RFD:Rate of Force Development)」という概念です。
これは、いかに短い時間で筋肉を爆発的に収縮させ、一気に最大パワーへと到達させられるかを示す指標です。
陸上競技において筋力トレーニングを活かすには、筋肉の量を増やす基礎段階を終えた後に、このRFDを劇的に高める神経回路の構築へと、トレーニングをシフトしていく必要があります。

具体的なトレーニング法としては、軽量から中程度の負荷を極めて素早く挙上する「クリーン」や「スナッチ」といったオリンピックリフティング(クイックリフト)が非常に有効です。
また、台の上から飛び降りて瞬時に跳ね上がる「デプスジャンプ」などのプライオメトリクストレーニングを導入することもおすすめです。
これらを行うことで、脳からの神経伝達スピードが飛躍的に高まり、短い接地時間の中で強大な力積(地面を押す力)を生み出すことが可能になります。
陸上選手がウエイトを行う際は、常に、「いかに速く動かすか」というスピードへの意識を持つことが大切です。
コンタクトスポーツ向きの筋トレは?
サッカーやラグビー、バスケットボールといったコンタクトを伴う球技においては、相手に当たり負けしないための「重さとフィジカルの強さ」と、ピッチを駆け抜けたり素早く切り返したりするための「アジリティ(敏捷性)とスピード」の両方が求められます。
ここでただ無計画に筋肉を大きくしてしまうと、体重が急激に増えたことに身体のコントロールが追いつかず、ステップがもたついたり、初速が遅れたりしてしまいます。
球技系の選手が、「筋トレで足が遅くなった」と実感しやすいのはこのためです。
これを防ぐために必要なのが、「期分け(ピリオダイゼーション)」という考え方です。
1年間ずっと同じように筋肉を大きくするトレーニングをしていては、常に疲労が抜けずコンディションは上がりません。
オフシーズンには筋肥大や最大筋力の向上に特化してエンジンを大きくし、プレシーズンが近づくにつれて、徐々にその重さをスピードに変換するための瞬発系トレーニングへと、割合を移行させていく必要があります。
この計画的な切り替えが、フィジカルの強さと足の速さを両立させるカギになります。
シーズンが開幕したら、筋肉をさらに大きくすることよりも、獲得したパワーを維持しながら疲労を抜き、毎試合フレッシュな状態で爆発力を発揮できるコンディショニングを優先します。
シーズン中の筋トレは、負荷を少し落としつつ、スピードを意識した質の高いメニューを短時間で行うのがおすすめです。

また、急激な方向転換やダッシュの繰り返しが多いサッカーなどでは、筋肉の質だけでなく、それを支える関節の可動域や腱の弾力性も大切になります。
練習後のケアやストレッチを怠らず、常に身体を、「動ける状態」にチューニングしておくことで、軽快なプレーを生み出すことができます。
まとめ:筋トレで足遅くなるって本当?
最後までお読みいただきありがとうございました。
ここまで筋トレで足は遅くなるのかという題材について、科学的な視点や実践的なアプローチをお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか。
結論として、正しい知識と方法論に基づいて取り組む限り、筋トレによって足が遅くなるという心配は不要だと言えます。
筋肉という強力な「エンジン」を大きく育てるウエイトトレーニングと、それを100%の推進力へと変換する「運転技術(神経系・動作技術)」のトレーニング。
この両輪をバランスよく行うことが、爆発的なスピードを手に入れ、競技力を向上させるためには重要なんです。
特に、一時的な筋疲労によるタイムの低下や、重さを求めるあまり起こりがちな動作の硬化を、「足が遅くなった」とネガティブに捉えてしまうのは非常にもったいないことです。
成長期の中学生や高校生であれば、まずは正しいフォームと身体の使い方を覚えることが最優先です。
そして各競技のアスリートは、それぞれのスポーツ特性(ベクトルや接地時間)に合わせた専門的な変換トレーニングをシーズンに合わせて計画的に組み込んでいくことが大切です。
焦らず、中長期的な視点を持って、自分の身体と向き合ってほしいなと思います。
応援しております!
※本記事で紹介した内容はあくまで一般的な目安や理論に基づいたものです。体格や成長度合い、過去の怪我の履歴には個人差が大きく影響します。特に高負荷のトレーニングを取り入れる際や、身体に痛み・違和感がある場合は、決して無理をせず、必ずスポーツ整形の医師や専門のトレーナーにご相談くださいね。最終的な判断は専門家と共に行うという自己責任の意識を持ちつつ、この記事の内容をみなさんの競技力向上や日々のトレーニングのヒントにしていただければ嬉しいです。頑張ってくださいね!

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