ベンチプレスが二頭筋に効いてしまう原因は?正しいフォームを解説

ベンチプレス

こんにちは。おとFITNESS運営者の「OTOWA」です。大胸筋を鍛える王道種目であるベンチプレスですが、トレーニング中に肩の前側や腕の力こぶ(上腕二頭筋)の部分に違和感を覚えることはありませんか。

本来ターゲットではないはずの場所に刺激が入ると、フォームが間違っているのではないかと不安になりますよね。実は、ベンチプレスが二頭筋に効いてしまうという現象には明確な原因があります。

そして間違ったフォームのまま無理に続けると、怪我につながるリスクもあるため、正しい知識で対処することが大切です。

今回は、なぜ腕に効いてしまうのかという疑問から、具体的なフォームの改善策までを現役パーソナルトレーナーの私が、分かりやすく解説していきます。

本記事でわかる4つのポイント
  • ベンチプレスで二頭筋に刺激が入るメカニズムとそのリスクについて
  • 脇の開きや手幅など具体的なベンチプレスのフォーム改善ポイント
  • 痛みを抑えながら、大胸筋に効かせるための修正テクニック
  • ベンチプレスの代わりになる種目やセルフケアの方法を紹介
目次

ベンチプレスが二頭筋に効いてしまう原因とメカニズム

上腕二頭筋

まずは、なぜ胸のトレーニングであるはずのベンチプレスで、腕の筋肉である上腕二頭筋が関与してしまうのか、その根本的な理由を見ていきましょう。

実はこれ、単なる意識の問題ではなく、身体の構造的な動きが大きく関係しているんです。解剖学的な視点を持つことで、痛みの正体が見えてきます。

脇の開きすぎが二頭筋に効いてしまう

フォームの中で最も多い原因の一つが、「脇の開きすぎ」です。大胸筋を最大限にストレッチさせようとして、脇を90度近く(真横)まで大きく開いて動作を行っていませんか?

確かに、ボディビルの教科書的な理論では「脇を開くと大胸筋の走行に沿って負荷がかかる」と言われることがありますが、これは肩関節の柔軟性が非常に高い人や、軽い重量で効かせることに特化した上級者向けのテクニックである場合が多いです。

一般的なトレーニーや筋トレ初心者が、脇を90度開いた状態(T字のフォーム)で高重量を扱うと、上腕骨頭(腕の骨の頭)が関節窩(関節の間の空間)から前方に押し出される力が働きます。

これを「前方偏位(Anterior Glide)」と呼びます。解剖学的には、上腕二頭筋の長頭腱(二頭筋の外側)は上腕骨の「結節間溝」という溝を通っているのですが、骨頭が前に飛び出すことで、この腱が骨の壁や靱帯と強くこすれ合ったり、挟み込まれたりするリスクが激増してしまうんです。

これにより、肩の前の部分に強烈な伸張ストレスがかかり、それが「二頭筋に効いてしまう」感覚として現れます。

さらに、脇を開きすぎると、肩甲骨の安定化に関与する回旋筋腱板(ローテーターカフという肩の深い部分の筋肉)の働きが抑制されやすくなります。

ローテータカフが機能しないと、上腕骨頭を関節の中心に保つことができなくなり、その代償として上腕二頭筋が必死に骨頭を支えようと過緊張を起こします。

つまり、フォームのエラーによって「大胸筋への負荷」が「二頭筋腱への過度な負荷」に変換されてしまっているわけですね。

この状態で無理にプレスを続けることは、腱に対して無理なストレスを与え続けることになりかねません。

適正な脇の角度は、個人差はありますが概ね「45度〜75度」程度と言われています。この角度であれば、上腕骨頭の求心性が保たれやすく、二頭筋腱へのストレスを最小限に抑えることができます。

ベンチプレスの二頭筋の痛みは危険信号かも?

トレーニングをしていて「二頭筋に効いている」と感じるとき、それが心地よい筋肉痛であれば良いのですが、ベンチプレスの場合は少し警戒が必要です。

なぜなら、ベンチプレスにおいて上腕二頭筋(特に外側の長頭)は、重さを押し上げる主動筋(Prime Mover)としてではなく、肩関節を安定させるための「ダイナミック・スタビライザー(動的安定化装置)」として働いているからです。

本来であれば、大胸筋や三角筋前部が主役となってバーベルを挙上するはずですが、フォームの乱れや関節の位置関係によって、この「支える役割」である二頭筋に過剰な負担がかかってしまうことがあります。

特に、ボトムポジション(バーが胸に一番近い位置)では、肩関節が伸展し、二頭筋の腱が物理的に引き伸ばされやすい状態になります。

ここで「効いている」と感じるのは、筋肉が喜んで成長しようとしているシグナルというよりは、腱や関節包に過度な伸張ストレスがかかり、身体が悲鳴を上げているサイン(侵害受容性疼痛)であるケースが少なくありません。

この感覚を「筋肉に効いているから良いことだ」と誤解して放置してしまうと、慢性的な炎症である上腕二頭筋長頭腱炎や、最悪の場合は断裂といった深刻な怪我につながる恐れがあります。

また、この痛みは「関連痛」として現れることもあります。実際には肩関節の奥深く(関節唇など)に問題があるにもかかわらず、脳がそれを二頭筋の痛みとして錯覚してしまうパターンです。

日本整形外科学会などの専門情報を見ても、肩周辺の痛みは他の疾患との鑑別が重要であるとされています。

痛みの種類を見極めよう

トレーニングの翌日に来る「筋肉痛(DOMS)」であれば、ストレッチをした時に心地よい痛みを感じますが、もし動作中に鋭い痛み(刺すような痛み)があったり、夜寝ている時に肩の前側がうずくような痛み(夜間痛)がある場合は、腱炎やインピンジメントの疑いがあります。この場合はトレーニングを直ちに中止し、専門医の診断を受けることを強くおすすめします。(出典:日本整形外科学会『五十肩(肩関節周囲炎)』内、鑑別疾患としての記述より)

ベンチプレスで二頭筋短頭(内側)が痛む理由

筋トレ 悩み

二頭筋の痛みには場所によって種類がありますが、力こぶの真ん中や外側ではなく、脇に近い内側(胸との境目あたり)が痛む場合は、「短頭」という部分に負担がかかっている可能性があります。

上腕二頭筋は「長頭」と「短頭」の2つに分かれており、短頭は肩甲骨の「烏口突起(うこうとっき)」という部分に付着しています。

この短頭が痛む主な原因は、現代人に多い「巻き肩(上位交差症候群)」の状態でプレス動作を行ってしまうことです。

デスクワークなどで猫背になり、肩が前に出ている状態が定着していると、仰向けになっても肩がベンチ台から浮き上がってしまいます。

この状態でバーベルを下ろすと、上腕骨頭が過度に伸展(後ろに引かれる)した際に、烏口突起の下で筋肉や腱がインピンジメント(衝突・挟み込み)を起こしやすくなるんです。

特に、可動域を広げようとして肘を深く下げすぎる(過伸展させる)と、烏口突起と上腕骨頭の距離が近づき、その間に位置する短頭腱や滑液包に強い圧迫力がかかり、痛みが出る可能性があります。

また、ワイドグリップ(手幅を広く持つ)で行う場合も、ボトムポジション(バーを一番降ろした位置)での二頭筋のストレッチ感が強くなるため、短頭へのストレスが増大します。

胸の筋肉が硬くて肩甲骨が十分に寄せられない人が、無理に可動域を広げようとすると、胸ではなくこの「短頭」ばかりが引き伸ばされてしまい、結果として二頭筋の内側に痛みが走ることになるのです。

手幅が狭いナローベンチプレスでも二頭筋は使う?

上腕三頭筋をメインに鍛える目的で行う「ナローベンチプレス」ですが、この種目を行っている時にも、意外と多くの人が二頭筋への関与や痛みを感じていると思いますが、これには関節の可動域と、筋肉の長さの変化(長さ-張力関係)が深く関わっています。

手幅を狭くすると、通常のベンチプレスよりもバーベルの移動距離が長くなります。つまり、ボトムポジションで肘が体幹よりも深く下がる(地面に近づく)ことになります。

この時、肩関節は通常よりも強い伸展位(後ろに引かれた状態)となります。上腕二頭筋、特に長頭は肩関節の関節上結節に付着しているため、肩が伸展されると物理的に強く引っ張られる構造になっています。

ですので、ナローベンチでバーを深く下ろしすぎると、この肩が引っ張られて、限界に達し、筋肉が引きちぎられないように結果として、上腕二頭筋が収縮してしまいます。

また、ナローグリップは通常のベンチプレスよりも手幅が狭いのでバランスがとりづらく、バーベルが左右にグラつきやすくなります。

この不安定なバーを制御するために、前腕の回外(手のひらを上に向ける動き)や回内をコントロールする筋群が使われてしまいます。

上腕二頭筋は強力な「前腕回外筋」でもあるため、バーのバランスを取るために無意識のうちに力が入ってしまい、アイソメトリック(長さが変わらない収縮)な疲労が蓄積しやすいのです。

そのため、三頭筋を鍛えているつもりが、実は二頭筋がブレーキ役として過労状態になっている、というケースは非常に多いです。

ナロープレスの注意点

ナローで行う場合は、無理にバーが胸につくまで下ろす必要はありません。肘が体幹の側面を通過するあたりで切り返すか、あるいは上腕が地面と平行になる程度で止めることで、二頭筋への過剰なストレッチを防ぎつつ、三頭筋への負荷を維持することができます。

腕に効いてしまうフォームは肩甲骨の固定不足かも

肩甲骨を寄せる女性

「胸に効かせたいのに、どうしても腕(二頭筋や三頭筋)ばかり疲れてしまう」という悩みを持つ方は、そもそもの土台である「肩甲骨」が安定していないことが最大の原因として考えられます。

ベンチプレスにおいて、肩甲骨は建物の基礎のような役割を果たしています。

背中のアーチを作り、肩甲骨を寄せて下げ(肩甲骨下制)、シートに突き刺すように固定することで、初めて肩関節が安定し、大胸筋をメインエンジンとして使えるようになります。

しかし、この固定が甘く、動作中に肩甲骨が外に開いたり(外転)、上にすくんだり(挙上)してしまうと、土台がグラグラの状態になります。

土台が不安定な状態で重いバーベルを支えようとすると、身体は中心から遠い末端の筋肉、つまり「腕の力」を使ってバランスを取ろうとします。

大胸筋という大きな筋肉が機能不全に陥っているため、その代償として上腕二頭筋や三頭筋、前腕筋群が総動員されてしまうのです。

この状態では、いくら回数を重ねても胸には効かず、腕の付け根や肘周りだけがパンパンに張ってしまいますので、まずは肩甲骨をしっかり寄せて下げるために、日ごろから胸のストレッチをしておきましょう。

ベンチプレスが二頭筋に効いてしまう時の改善方法

ベンチプレスする男性

原因が詳細にわかったところで、次はそれを解消するための具体的な修正テクニックについて解説していきます。

少しの意識の切り替えや、セットアップの手順を見直すだけで、大胸筋にガツンと効くようになることもありますよ。

バーの軌道と下ろす位置を見直す

まず最初に見直すべきは、バーベルを下ろす位置と、その軌道です。

多くの初心者が、バーをラックから外した後、そのまま鎖骨や首の方に向かって、垂直にストレートに下ろしてしまう傾向があります。しかし、この垂直軌道は、解剖学的に見て肩や二頭筋へのリスクが非常に高い動きです。

二頭筋や肩への負担を減らすための正解ルートは、「Jカーブを描くように、みぞおち(剣状突起)付近に下ろす」ことです。

具体的な手順としては、まずバーをラックアップし、肩関節の真上で静止させます。そこから真下ではなく、少しお腹側(足側)に向かって斜めにスライドさせるように下ろしていきます。

乳頭ラインよりも少し下、みぞおちあたりにタッチするのが理想的です。そして挙上する時は、顔の方へ向かって斜め後ろに戻していきます。

この「斜めの軌道」を採用することで、脇の角度が自然と45度〜75度程度に収まります。これにより、上腕二頭筋長頭腱へのインピンジメントリスクが劇的に減少し、かつ大胸筋下部や中部の繊維もしっかりと動員できるようになります。

最初は「お腹の方に下ろすと力が入らない」と感じるかもしれませんが、慣れればこの軌道の方が肩甲骨の安定性を保ちやすく、高重量を扱いやすくなるはずです。

グリップのコツ

グリップのコツとして、「バーをへし折る(Bend the Bar)」ようなイメージで強く握り込むと、自然と肘が内側に入り、脇が締まりやすくなります。この意識を持つだけで二頭筋への不快なストレッチ感が減ることもあるのでおすすめです。

肩甲骨を内転させアーチを作るには?

肩甲骨を寄せる男性

先ほど触れた「肩甲骨の固定」を徹底的に習得しましょう。これを専門的には「パッキング(Packing)」とも呼びますが、ただ単に胸を張れば良いというわけではありません。

以下の手順で、練習してみてください。

パッキング練習法
  1. ベンチに仰向けになり、まずはバーを握らずに万歳をします。そこから肩甲骨を背骨に寄せるようにグッと引き寄せます(内転)。
  2. 寄せた肩甲骨を、そのままお尻のポケットに入れるようなイメージで、足側へ強く下げます(下制)。これが「肩をすくませない」ための最重要ポイントです。
  3. その肩甲骨の位置をキープしたまま、胸椎(背骨の上部)を天井に向かって高く突き上げ、ブリッジ(アーチ)を作ります。
  4. 最後に、足裏全体で床を強く踏みしめ(レッグドライブ)、その反力でさらに肩をベンチシートに食い込ませます。

このセットアップが完了したら、動作中はいかなる時も肩甲骨の位置を動かさないように意識します。

特にバーを押し切る(トップポジション)瞬間に、肩が一緒に前に出てしまいがちですが、これを防ぐためには「バーを押す」のではなく「背中でベンチ台を床に押し込む」という意識を持つことが有効です。

自分がベンチ台にめり込んでいくような感覚で行うと、肩甲骨が浮かず、二頭筋が過剰に働くのを防ぐことができます。

痛みが続くならダンベルベンチプレスを代用

ダンベルベンチプレス

どれだけフォームを修正しても、骨格の個人差や過去の怪我の影響で、どうしてもバーベルベンチプレスだと二頭筋に違和感が出てしまうというケースもあります。

その場合、バーベルという道具自体が、今のあなたの肩の状態に合っていない可能性が高いです。バーベルは一本の棒で両手が固定されているため、手首や肘の自由度がなく、関節への微調整が効かないからです。

そんな時は、無理にバーベルに固執せず、思い切ってダンベルプレスに切り替えてみることを強くおすすめします。ダンベル最大の利点は、手首の角度を自由に変えられることです。

通常の「順手(プロネイテッド)」ではなく、手のひらが向かい合う「ニュートラルグリップ(パラレル)」や、少し斜めにする「ハの字(45度)」の角度でプレスを行ってみてください。

ニュートラルグリップにすることで、上腕骨の大結節と肩峰の衝突が回避され、結節間溝を通る二頭筋腱への摩擦ストレスも大幅に軽減されます。

また、ダンベルは片手ずつ独立して動くため、左右差を補正しやすく、より自然な軌道で大胸筋を収縮させることができます。

「バーベルこそが正義」という固定観念を捨て、痛みの出ない種目で質の高いトレーニングを行う方が、結果的に筋肥大への近道になるはずです。

以下にバーとダンベルプレスの違いを、ざっくりまとめたので、ご参考ください。

種目名特徴二頭筋への負担初心者おすすめ度
通常のベンチプレス高重量を扱えるが、フォーム習得が難しくリスクも高い高い(フォームによる)★★★
ダンベルプレス手首の角度を自由に調整でき、関節に優しい中〜低い★★★★★

炎症時はアイシングと安静を優先しよう

最後に、最も重要な対処法をお伝えします。もし、トレーニング中だけでなく、終わった後もズキズキとした鋭い痛みが胸や肩に残る場合や、夜寝ている時に痛みで目が覚めるような場合は、フォーム修正以前に「治療」が必要です。

この場合、すでに腱や周辺組織に炎症が起きている可能性が高いため、そのままトレーニングを続けることは避けてください。

急性期の痛みに対しては、まずはRICE処置(現在はPOLICE処置とも言われます)の基本であるアイシングが有効です。

患部(肩の前側や力こぶの付け根)を氷などで15分〜20分ほど冷やし、炎症の拡大を抑えましょう。そして何より重要なのが「安静」です。

勇気を持って、ベンチプレスだけでなく、二頭筋を使うカール系の種目も含めて、数週間トレーニングをお休みする決断も時には必要です。

「休むと筋肉が落ちる」と不安になる気持ちは痛いほど分かりますが、痛みを我慢してだましだまし続けても、質の高いトレーニングはできませんし、変な癖(代償動作)がついてしまいます。

最悪の場合、慢性化して手術が必要になったり、半年以上バーベルを握れなくなったりすることもあります。

「急がば回れ」の精神で、まずは組織の回復を最優先にし、医師や理学療法士の指導の下で、ローテーターカフ(肩の深層筋)の強化やストレッチなどのリハビリから慎重に再開してくださいね。

結論:ベンチプレスが二頭筋に効いてしまう悩み

今回は「ベンチプレスが二頭筋に効いてしまう」という多くのトレーニーが抱える悩みについて、その原因から解決策までを深掘りして解説してきました。

この感覚は、単に「効かせ方が下手」なのではなく、フォームのエラーや身体の構造的な限界、そして関節への危険な負担を知らせる重要なサインであることがお分かりいただけたかと思います。

特に、無意識の「脇の開きすぎ」や「肩甲骨の固定不足」は、知らず知らずのうちに肩や上腕骨に負担をかけてしまい、結果として怪我に繋がることも多いため、特に意識して改善したい点です。

解決策としては、まずは「バーの軌道をみぞおち寄りに修正する」「肩甲骨を下げてアーチを作る」といった基本フォームの見直しから始めてみてください。

それでも違和感が拭えない場合は、無理をしてバーベルに固執する必要はありません。

ダンベルプレスといった代替種目を賢く活用することで、怪我のリスクを最小限に抑えつつ、ターゲットである大胸筋を効率的に成長させることは十分に可能です。

自分の身体の声(痛みや違和感)に正直になり、長く楽しくトレーニングライフを続けていきましょう!

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療を代替するものではありません。痛みが続く場合や日常生活に支障が出る場合は、自己判断せず、必ず整形外科などの専門医療機関にご相談ください。

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