こんにちは。おとFITNESS運営者の「OTOWA」です。ジムでの雑談やネット上の掲示板、SNSなどで「ダンベルフライは意味ない」という意見を目にしたことはありませんか?
こういった意見を見ると、「ずっとメイン種目としてやっていたのに…」「せっかくのトレーニングが無駄になっているのではないか…」と不安になってしまいますよね。
パーソナルトレーナーとして活動している私自身も、トレーニングを始めたばかりの頃、同じような情報を見て迷走した経験があるので、その気持ちは痛いほどよくわかります。
確かに、ダンベルフライには「トップポジションで負荷が抜ける」という物理的な特性があり、ケーブルマシンや最新のスタック式マシンと比較して効率が悪いと指摘されることがあります。
また、フォームが難しく、「胸に効く前に肩が痛くなる」というトラブルから、効果を実感できずに離脱してしまう方が多いのも事実です。しかし、結論から言えば、ダンベルフライが意味ないというのは大きな誤解です。
むしろ、正しいフォームや適切な重量設定で行えば、ベンチプレスや腕立て伏せといったプレス系種目では決して得られない、強烈な筋肥大刺激を大胸筋に与えることが可能なのです。
この記事では、現役パーソナルトレーナーの私が、なぜ「ダンベルフライは意味がない」と言われてしまうのか、そのメカニズムを、最新のトレーニング科学の観点で、包み隠さず解説しつつ、この種目を行うメリットを徹底解説します。
さらに、多くの人が陥りがちな「肩が痛くなるNGフォーム」の改善策や、怪我を防ぎながら効果を最大化するための具体的なテクニックまで、私の経験と知識を総動員してお伝えします。
「効かない」を「効く」に変えるためのヒントが必ず見つかるはずですので、ぜひ最後までお付き合いください。
- ダンベルフライの効果が疑問視される物理的な理由がわかる
- 効果を最大限に引き出すための「ストレッチ」の重要性が理解できる
- 肩の痛みを防ぎながら大胸筋に効かせる正しいフォームが学べる
- 自分に合った適切な重量設定と可動域の目安がわかる
ダンベルフライは意味ないと言われる理由

一生懸命ダンベルフライをやっているのに、「なんだか胸に効いている感じがしない」「腕ばかり疲れる」と悩む方は非常に多いです。
その感覚は、決してあなたの感覚が鈍いわけではなく、しっかりとした理由があります。
ここでは、なぜダンベルフライが「意味ない」と言われてしまうのか、その理由と、ダンベルフライをやることのメリットについて、バイオメカニクス(生体力学)の視点を交えながら深掘りしていきましょう。
トップで負荷が抜けるため効果が薄い?
ダンベルフライが「意味ない」と批判される最大の理由は、ダンベルを持ち上げた一番上の位置、つまり「トップポジション」において、大胸筋への負荷が物理的に消失してしまう点にあります。
これには重力の方向と関節の位置関係が深く関わっています。
ダンベルというフリーウェイト器具の特性上、負荷は常に「鉛直下向き(床の方向)」にかかり続けます。
動作のスタートとなるボトムポジション(腕を開いた状態)では、腕が横に伸びているため、重力に対して垂直に近い形で筋肉が対抗しなければならず、非常に強い負荷がかかります。
しかし、ダンベルを持ち上げていき、腕が床に対して垂直(天井に向かって真っすぐ)になった瞬間、どうなるでしょうか?
この時、ダンベルの重量は、筋肉の収縮力ではなく、上腕骨や肘関節、肩関節といった「骨格のつっかえ棒」によって支えられる状態になります。
専門的にはこれを「モーメントアームがゼロになる」と表現しますが、要するに「一番上で胸をギュッと寄せても、横方向からの抵抗がないため、筋肉自体は休んでいる状態」になってしまうのです。
トレーニーの多くは、「筋肉に効いている」という感覚を、「ギュッと筋肉が収縮している時の硬さ」で無意識に判断してしまうところがあります。
そのため、トップで負荷がスッと抜けてしまうダンベルフライは、「一番重要な所で力が抜ける」「動作の半分が無駄になっている」と感じられやすく、これが「意味ない」という声に繋がっていると考えられます。
ケーブルやマシンフライとダンベルフライの違い

もしあなたが、トレーニングにおいて「大胸筋の内側までギュッと収縮させる強い感覚」や、動作中ずっと負荷が抜けずに筋肉が熱くなるような「パンプアップ感」を最優先に求めているのであれば、ダンベルフライは最適解ではないかもしれません。
そのような目的の場合、ダンベルフライよりも「ケーブルクロスオーバー(ケーブルフライ)」や「ペックデックマシン(バタフライマシン)」の方が、はるかに効率的であるケースがあります。
ケーブルマシンやペックデックマシンの最大の強みは、滑車やカムといった構造を利用することで、負荷の方向を自由に変えられる点にあります。
これにより、腕を体の前で閉じたトップポジション(筋肉の最大収縮位)においても、外側へ引っ張られる力が働き続けます。
つまり、動作の最初から最後まで、筋肉から負荷が抜ける瞬間が一切ないのです。例えば、ケーブルクロスオーバーで両手を交差させるまで絞り込めば、ダンベルでは絶対に味わえない強烈な収縮感を得ることができます。
「じゃあ、やっぱりダンベルフライはケーブル種目の下位互換で意味ないじゃん」と思うかもしれませんが、そうではありません。
これらはあくまで「得意な局面が違う」だけなのです。野球で言えば、剛速球投手と変化球投手のようなもので、どちらが優れているかではなく、どの場面で使うかが重要になります。
以下の表に、それぞれの特性をまとめてみました。
| 比較項目 | ダンベルフライ | ケーブル・マシン |
|---|---|---|
| 負荷の掛かり方 | ボトム(伸びた時)で最大、トップでゼロ | 全可動域で一定の負荷が続く |
| 得意な刺激 | 強烈なストレッチ(伸張刺激) | 持続的なテンションと収縮(スクイーズ) |
| 安定性 | 低い(自分でバランスを取る必要あり) | 高い(軌道が安定している) |
- ケーブル・マシン:収縮感重視、パンプ狙い、安全性重視、仕上げの種目として最適
- ダンベルフライ:ストレッチ重視、筋繊維の微細な損傷狙い、中盤の種目として最適
ベンチプレスにはない独自のメリット
「ダンベルフライなんてやらなくても、重い重量を扱えるベンチプレスだけやっておけばいいのでは?」という意見も、昔から根強く存在します。
確かに、コンパウンド種目(多関節種目)であるベンチプレスは、大胸筋だけでなく三角筋や上腕三頭筋も動員して高重量を扱えるため、基礎的な筋力(Strength)を向上させるという意味では最強の種目です。
時間がない時に「胸の種目をどれか一つだけ」選ぶなら、私もベンチプレスをおすすめします。
しかし、ボディメイクや筋肥大という観点で見ると、ベンチプレスには限界があります。理由は、「バーベルのシャフトが胸に当たって止まる」という点です。
バーベルベンチプレスでは、どんなに可動域を広く取ろうとしても、バーが胸に触れた時点で動作は終了します。この位置では、多くの方にとって大胸筋はまだ完全にはストレッチされきっていません。
これに対してダンベルフライは、左右の重りが独立しており、胸を邪魔するシャフトが存在しません。そのため、肩関節の柔軟性が許す限り、可動域の限界まで深く腕を開き、大胸筋をフルストレッチさせることができます。
まるで弓を引き絞るように、筋肉を最大限まで引き伸ばすことができるのです。
また、ベンチプレスは「押す」動作であるため、どうしても肩や腕の筋肉の関与が大きくなりますが、ダンベルフライは「抱え込む」動作であるため、上腕三頭筋の関与を最小限に抑え、大胸筋をより孤立(アイソレート)させて刺激することが可能です。
ですので、「ベンチプレスだと腕ばかり疲れて胸に効かない」という悩みを持つ方こそ、実はダンベルフライはおすすめの種目です。
筋肥大のカギとなるストレッチの重要性

ここが今回、私が最もお伝えしたい最重要ポイントです。近年のスポーツ科学や筋生理学の研究において、筋肥大の常識を覆すような発見が相次いでいます。
その中心にあるのが「ストレッチ主導型筋肥大(Stretch-Mediated Hypertrophy)」という概念です。
かつては「筋肉は収縮させることで成長する」と考えられていましたが、最新の研究では、「筋肉が強い負荷を受けながら強制的に引き伸ばされた状態(伸張位)」こそが、最も強力な筋肥大シグナルを生み出すことがわかってきました。
筋肉が引き伸ばされると、筋繊維の中にある「タイチン(またはチチン)」という巨大タンパク質がバネのように引き伸ばされ、受動的な張力を発生させます。さらに、筋繊維そのものがミクロレベルで微細な損傷を受けやすくなります。
この「機械的な伸張ストレス」を感知した筋肉の細胞は、「これ以上引き伸ばされて千切れてるとまずい!」と反応し、筋肉の長さを伸ばすために「サルコメア(筋節)」という筋肉の最小単位を直列に継ぎ足そうとする適応反応を起こします。
これが、ストレッチによる筋肥大のメカニズムの一つと考えられています。
ダンベルフライのボトムポジション(腕を一番開いた状態)は、まさにこの「負荷のかかった最大伸張」を大胸筋に与えている状態で、一番重要です。
逆にトップポジション(腕を伸ばし切った状態)で負荷が抜けることは、この概念によるとそこまで重要ではありません、ダンベルフライのメリットは「上げること」ではなく、「耐えながら下ろして、限界まで伸ばすこと」にあるからです。
この理論に基づけば、ダンベルフライの場合、トップまで上げずにボトム付近だけで往復するだけでも、筋肥大には十分な効果があると言えます。
実際にトップボディビルダーの中には、トップまで上げきらず、負荷が抜け始める手前で動作を折り返す「パーシャルレップ法」を採用している選手が多くいます。これは「おいしいところ(ストレッチ局面)」だけを重点的に味わうための理にかなったテクニックです。
マシンフライとダンベルフライの効果的な使い分け

ここからはマシンフライとダンベルフライの違いを解説します。それぞれの特性を理解し、効果的に使い分けることが、飽きのこないトレーニングと継続的な成長のカギとなります。
ペックデックなどのマシンフライは、軌道が完全に固定されているため、動作中にバランスを取る必要がありません。これにより、疲労困憊の状態でもフォームが崩れにくく、最後まで安全に大胸筋を追い込むことができます。
また、初心者の方でも「胸を使う感覚」を掴みやすいのが利点です。しかし、マシンの軌道はメーカーが決めたものであり、あなたの骨格や関節の柔軟性に完璧にフィットするとは限りません。無理に合わせようとすると、肩関節に不自然なストレスがかかることもあります。
一方でダンベルフライは、手首の角度、肘の曲げ具合、腕を開く軌道などを、自分の骨格やその日のコンディションに合わせてミリ単位で微調整できるのが最大の強みです。
「今日はちょっと肩が痛いから、少し手のひらを内側に向けてみよう」といった調整が自在にできます。その分、バランスを取るための「スタビライザー(細かい安定筋群)」も動員されるため、全身の連動性を高める効果も期待できます。
ですので、「今日は安全にパンプさせたい、最後の追い込みに使いたい」という時はマシン、「今日はトレーニングの前半で、ガッツリ筋繊維を伸ばして破壊したい」という時はダンベルといったように、その日の目的やメニューの順番によって使い分けるのがベストな戦略かなと思います。
ダンベルフライが意味ないは間違い!正しいやり方解説

ダンベルフライは胸の筋肥大に非常に効果的な種目ですが、非常に怪我をしやすい種目でもあります。
間違ったやり方で行うと、効果がないどころか、肩や肘を一瞬で痛めてしまい、長期間トレーニングができなくなるリスクもあります。
ここでは、怪我なく安全に、大胸筋だけにピンポイントで効かせるための実践的なテクニックを解説します。
肩が痛くなる原因となるNGフォーム解説
「ダンベルフライをやりたいけど、やると肩の前側がズキズキ痛む…」という悩みは、ジムで最もよく聞く相談の一つです。
この痛みを「効いている証拠」と勘違いして続けてしまうと、インピンジメント症候群(肩の慢性的な炎症)などの深刻な障害に繋がる恐れがあります。
痛みの原因の9割は、以下の2つのNGフォームに集約されますので、チェックしてみてください。
- 腕を開きすぎている(T字になりすぎている):
真上から見た時に、腕が体に対して垂直(T字)になりすぎると、肩関節の構造上、インピンジメント(挟み込み)が起きやすくなります。特にボトムポジションでこの状態になると、関節包に強烈なストレスがかかります。 - 肩甲骨の寄せが甘い(胸が張れていない):
肩甲骨が寄っておらず、背中が丸まった状態で腕を開こうとすると、肩が前に出る「巻き肩」の状態になります。この状態で重りを受けると、上腕骨頭が前方に押し出され、肩の前側の組織を押し潰してしまいます。
また、意外と知られていないのが「烏口腕筋(うこうわんきん)」の損傷です。これは脇の下を通る小さな筋肉ですが、腕を開きすぎたり肘を伸ばしすぎたりすると過剰に引き伸ばされ、肩の深部に鋭い痛みを引き起こします。
痛みが出る場合は、決して無理に可動域を広げようとせず、「フォームが間違っているよ」という体からのSOSだと捉えて、フォームを見直すようにしましょう。
初心者が設定すべき適切な重量の目安
ダンベルフライのような高難易度の種目において、重量設定は非常に重要です。ベンチプレスのように「重いものを持ち上げれば勝ち」という種目ではありません。
高重量を扱おうとしてフォームが崩れれば、それはただの「肘が開いたダンベルプレス」になってしまい、フライ特有のストレッチ効果は消滅します。さらに、肩への負担は増えて、怪我に繋がってしまいます。
あくまで一般的な目安ですが、男性の初心者の方であれば、片手4kg〜8kg程度から始めてみるのが賢明です。体重や筋力にもよりますが、「軽すぎるかな?」と思うくらいの重量で全く問題ありません。
まずはその重量で、フォームを安定させることが最優先です。中級者以上の方でも、普段ダンベルプレスで扱っている重量の50%〜60%程度を目安にすると良いでしょう。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準」などの資料(出典:厚生労働省『成人を対象にした運動プログラム』)においても、筋力トレーニングの強度は適切に設定し、整形外科的な事故のリスクを避けることが推奨されています。
特にフライ系種目は関節へのモーメントアームが長くなるため、数字上の重量以上に負荷を感じやすい種目であることを忘れないでください。
ダンベルフライの正しいフォーム
では、具体的にどう動かせば大胸筋にしっかり効くのでしょうか。最大のコツは、単なる上下運動ではなく、「大きな木を抱きしめるような円運動」をイメージすることです。
まず、肘を少し曲げた状態(角度で言うと100度〜120度くらい)を作ります。そして、動作中は「その肘の角度を絶対に固定する」ことが極意です。
下ろすときに肘が伸びてしまうと二頭筋に負荷が逃げ、上げるときに肘が曲がってしまうとプレスになってしまいます。
下ろすときは、ダンベルを真下に落とすのではなく、「肘を遠くの壁に向かって引っ張る」ような意識で、胸郭(肋骨)を大きく広げていきます。
3〜4秒かけてゆっくりと、筋肉がきしむような音を聞くつもりで耐えながら下ろします。そして切り返すときは、反動を使わず、引き伸ばされたゴムが縮むような感覚で、胸の筋肉を使って腕を引き戻します。
完全にトップ(ダンベル同士がぶつかる位置)まで戻すと負荷が抜けてしまうので、肩幅くらいの広さ、あるいは「負荷が抜けそうだな」と感じる手前で寸止めし、そこから再び下ろし始めるように行うと、筋肉の緊張時間が持続し、より効果的です。
ダンベルフライの怪我のリスクを減らす方法
「筋肉のストレッチが大事なら、できる限り深く下ろせばいいんでしょ?」と考えるのは危険です。
可動域の限界は、骨格や柔軟性によって一人ひとり全く異なりますので、無理に深く下ろすことは、筋肉ではなく関節の靭帯や腱を伸ばしてしまう行為に他なりません。
安全かつ効果的な可動域の目安としては、「肘が背中のラインより少し下がるくらい」、あるいは「胸の筋肉に適度な張り(心地よい痛み)を感じる場所」までで十分です。
もし動作中に肩の奥にピリッとした鋭い痛みや、関節が外れそうな違和感を感じたら、それは明らかに下ろしすぎのサインです。
もし、どうしても下ろしすぎてしまう癖が直らない、あるいは肩に不安があるという場合は、ベンチ台を使わずに床に寝転がって行う「フロアフライ」を強くおすすめします。
床が物理的なストッパーとなり、肘が床に着いた時点で動作が止まるため、肩関節が危険な角度まで開くのを強制的に防いでくれます。
「意味ない」どころか、怪我のリスクをほぼゼロにしながら高重量を扱える、非常に優秀なバリエーション種目です。
| 種目バリエーション | 可動域と安全性 | こんな人におすすめ |
|---|---|---|
| 通常のダンベルフライ | 制限なし(自分で制御)。ストレッチ効果最大だがリスクあり。 | 柔軟性があり、フォームを習得した中級者以上。筋肥大を最大化したい人。 |
| フロアフライ | 床で制限される。ストレッチは弱まるが安全性は最強。 | 肩に痛みや不安がある人、初心者、独りで高重量に挑戦したい人。 |
結論:ダンベルフライは意味ないわけではない
ここまで解説してきた通り、「ダンベルフライは意味ない」という声は、トップポジションでの負荷がなくなってしまう、という種目の特性である部分だけを、切り取った誤解に過ぎません。
確かにダンベルフライにはデメリットもありますが、それを補って余りある「強力に胸をストレッチする効果」という独自の強みを持っている種目です。
ですので、SNSの声や検索結果に惑わされず、まずは騙されたと思って、ダンベルフライを、軽い重量で丁寧なストレッチを感じることから始めてみてください。
動作は「寄せる」ことよりも「広げる」ことに意識を集中し、大胸筋が引き伸ばされる独特の感覚を一度でも掴むことができれば、あなたの胸トレーニングの質は劇的に向上します。
もちろん、痛みがある場合は無理をせず、医師や専門家、トレーナーにフォームを見てもらうことを強くおすすめします。正しい知識とフォームで、怪我なく理想の分厚い胸板を手に入れていきましょう!

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